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「いや~。君はあの電車に乗った時点で遅れて来ることになると覚悟していたんだ。まさか時間通りに来るとは思わなかったよ」
「あの山京線ってなんですかね。やばい電車ですね。もう少しで遅れそうでしたよ」
中垣さんは急に引き締まった顔をした。
「あの電車は今、必要とする自分の意思を試させる状況を作り出すことが出来る不思議な空間なんだ。転職活動では今までの経験プラスに新たな経験が必要になる。
その経験が出来たと思う。
君に描いてほしかったのは中学校の卒業時の進路を決めようとする感覚なんだ。中学卒業の時の進路を決めた時はやはり競争という名の戦火の中で自分の意思を始めて表したと思う。
それは一本の強い意思だったと思うんだ。
それに似たような経験をもう一度してほしかったんだ。
そしてその経験を乗り越えてきた。あなたは心に秘めることが出来たということで準備が整ったのだと思う」
僕はあの電車に乗って少し成長したのだろうか。中垣さんからそう言われるとなんだかそんな気がしてきた。
「佐原さんは迷いは消え、覚悟が出来たことでもう大丈夫だ。さあ紹介する企業に向かおう。勝負はこれからだから」
僕は大きく深呼吸してから前を歩く中垣さんの後をついて行く。
完
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