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「そこの若い人、しっかり手摺りかつり革に捕まっていた方が良いぞぉ。激しく揺れるからのぉ」
「そだよ。身を引くくしてなぁ」
優先席に座っている先程話しかけてきたおじいちゃんとその隣に座るおばあちゃんが話しかけてきた。
「あの人達はいったい誰なんですか」
僕は驚きのあまり声を荒たげた。
「あの人達はここら辺に住んでいる普通の地域住民じゃ」
「え、ここの地域住民なんですか」
僕とは対照的におじいちゃんは落ち着いてみえる。
「そうじゃあ、地域住民がこの電車に攻撃しているんじゃあ」
「な、なんでそんなことになっているんですか」
「若い人ぉ、この電車に乗るのは初めてみたいじゃな。もしかしたら山京線の歴史も知らないかもしれないな。実はこの新線が出来るまでに地域住民と一悶着があってな」
「一悶着ですか」
「そう、この電車が出来る前はここら辺は広大な田んぼと畑があったんだ。関東では唯一の緑と自然の調和した世界だった。それが突然、山京鉄道会社がこの場所を乗り込んできて新線を作ると言い出し工事し始めたんだ。そこで鉄道建設撤回の大規模なデモが起こった。しかし鉄道会社側は首都混雑緩和が目的だと一向に引かず強行して新線を建設してしまった。建設後も自然を愛する反対派の地域住民達は根強く不満を持っていた。一触触発状態が続いていたんだ」
「知らなかったです」
僕はそんな大規模なデモ運動を知らなかった。テレビで放映していたのを見逃していたのだろうか。
「知らないのは仕方ないのぉ。ほとんどテレビでは放映されていないから。最初は反対派の誰かが石を投げて妨害し始めたんだが、それに対して鉄道会社もやり返したんだな。みるみる内にエスカレートしていってなぁ。いたちごっこなっていつの間にか武器を使うようになってしまった。その前になんとか出来れば良かったのだが」
「誰が中心で攻撃しているです」
「それはよくわからないんじゃな。ただほとんどが素人だから電車に弾は直撃しないんだがな」
ドガーン。
ガタガタガタガタ。
言っている間も銃声と轟音が鳴り響いて電車が激しく揺れている。
僕はこの山京線に乗る前に何点か不思議に思っていたことがあったのだかその謎が解けた。
この電車は車体は迷彩の柄なのである。
駅員が防護ヘルメットかぶっていたり、防弾チョッキを着ている人いてイベントか何かやっているのか思い、気にも止めてなかった。
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