さらさらと

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 彼にまつわる記憶は意外なほどにあやふやで、サッカーをしている姿もこうして思い出している間に脳裏をよぎったけど、実際に自分の目で見たことなのかあやしい。よくよく見ていると、はしゃぐ後輩たちの中には彼を話題にしている子もいることがわかった。流れるような彼女たちの話が自然と耳に入ってくることもあった。話の中にはウソもホントウも織り交ぜた彼の話がたくさんあふれていたから、わたしの体験していないことまでが記憶としてうめこまれている気がする。そんなあやふやな記憶たちの中で、たった1つだけ自分の中から生まれてきたと自信を持てる記憶があった。  
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