第11章 桃の初めての恋人

13/37
前へ
/76ページ
次へ
無論全然仕事の力量で追いつくまではいかなかったが、グループが違うながらもわたしと佐内さんは次第に気の合う相方同士みたいな立ち位置になっていった。 彼に聞きたいことや今抱えてる仕事に関することなんかについては周りの人たちもとりあえず手近なわたしに尋ねて来たりとか。わかる範囲で答えはするけど、でも完全に仕事でだけの関係なのでプライベートなことはわからない。そう説明すると大抵へえ、と呆れられた。 「なんだ、結構親しそうなのにお前ってあの人のことなんも知らないじゃん。一緒に飲み行ったり個人的な話とかしないの?」 わたしは無表情に肩をすくめるしかない。 「…全然ない…」 だって、下心があってそれで頑張ってると思われたくないもん。仕事は仕事、プライベートはプライベート。どうせわたしみたいなちんちくりんなもの、彼の目に恋愛対象とか見えてるわけないし。変な野心は持たないに限る。 ほんとによく頑張ってるな、とか今日はありがとう、助かったよとか声をかけてもらえればそれで充分。 最初はそう思ってこっちから個人的な話は持ち出さないって決めてた。でも入社して二年目に入った辺りから、仕事の合間に慌ただしく一緒に食事したり休憩を取ったりする機会も増えたし、そんな中でぽつぽつとお互いの私的な話も少しずつ出るようになった。     
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加