第11章 桃の初めての恋人

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思うに多分、わたしは口に出してそれを確かめるのが怖かったんだと思う。漠然と彼の眼差しや柔らかく包むような言葉の中に含まれた思いを感じながら、これがわたしの浮かれた一方的な思い上がりにすぎなかったらめちゃくちゃ悲しいなぁ、とどこかで考えてたような気がする。ただの後輩に対する思いやりがそんな風に見えてただけで全然特別な気持ちなんかじゃなかった、なんて台詞を彼の口から聞かされるくらいなら。 どこかでもしかして、ってふわふわしたときめきを大切に抱えながら、今まで通りの関係のままでいる方がよっぽどいい…。 だけどわたしより先に、彼の方が自分を抑えられなくなった。ってことだったんだと思う。結局は。 それはクリスマスを前に開催されたあるイベントの最終日の出来事だった。会場の前にイルミネーションを華やかに飾りつけたツリーが立てられ、会場では北欧の国々から輸入されたグッズや食品がいっぱいに並べられてクリスマスマーケットが開かれている。最終日の今日は片付けと会場の現状復帰も済ませる必要があるので、少し早い終わり時間に設定されていた。 もうここまできたら無事に恙無く終了するのを待つだけ。ここまでの準備と運営でやや疲れた様子の佐内さんに、わたしはバックヤードで椅子を勧めて話しかけた。 「やっと終わりますねぇ。お疲れさまでした」 彼はすとんと素直に椅子に腰かけて、いつになく肩の力の抜けた姿勢でやれやれと言いたげな笑顔で傍らに立っているわたしを見上げた。 「お前も座りなよ。疲れたろ、この数日間ほんとにご苦労だったな。おかげで助かった、いつものことだけど」     
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