第11章 桃の初めての恋人

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事前に教えてもらってた通り、彼の所属してるグループの代表としてイベントの企画や運営の仕事内容や、今までの実績の説明をする講師として。一日目は座学で二日目は実際の現場で手伝いを兼ねて研修。そこでは霜山さんとも顔を合わせ、彼女は嬉しそうにぶんぶんと手を振ってくれた。 講師として新人全員を指導しなきゃならない立場の佐内さんとは、そこで個人的な会話を交わすチャンスはあまりなかった。 入社式が終わってすぐ、彼のLINEのIDを登録させてもらってお礼のメッセージを送った。向こうからも式に無事に参加できてよかった、これからも顔を合わせた時はよろしくねとあたたかい返信をもらったけどそれにとどまっている。まあ、困ったことがあったらと言ってはもらったけど。まだ研修中で仕事の上でトラブルが起こる状況ではないし、何でもない時にしょうもないメッセージを送ったりはとてもじゃないけどできない。これは会社の携帯の連絡先だってわかってるし。 だから講師で来てくれる時は少しは話せるかな、と期待してたけど。彼は当然全体を見る立場だから、講義の前にふと目が合ってお互いに黙礼を交わしたくらい。なかなか個人的に言葉を交わすってチャンスもなかった。 それでもあれ以来直にお礼を言うこともできてないし、引っ込んでないで前に出ていかないと。と自分に言い聞かせ、その日の講義が終わったタイミングでずかずかと彼に近づき、ぺこんと頭を下げた。     
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