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「向こうに戻りたくないというより。こっちにこのままいたいのになぁ、って意味です。久しぶりにイベントの現場にびったり入ったから…。なんか、名残惜しいですね」
その理由まではでっち上げなくてもいいか。更にぶっちゃけると、もう少し佐内さんのそばにいたいのに、になっちゃう。
まさかそんなこととは思わなかったのか、彼はパイプ椅子の背もたれに上背のある上体を寄りかからせた横着な姿勢のまま真面目な顔で思案した。
「そうだなぁ。お前はこっちの仕事、向いてると思うし。もう少しで入社して二年経つから、そろそろうちのグループに引き抜こうかって滝澤さんや霜山さんたちともずっと言ってるんだけど」
「ほんとですか」
ちなみに滝澤さん、ってのはイベント企画グループのリーダーで佐内さんたちの上司に当たる人だ。わたしの脳内にぱぁ、と花々が咲き誇る。グループ異動できたら。毎日佐内さんのそばにいられる…。
だけど彼は残念そうに肩を竦めた。
「でも、お前のとこの神谷さんは絶対駄目、こっちでも柚野が必要なんだからって。まあそりゃそうだよなぁ、と思ってさ。こうやってイベントのたびにレンタルお願いしても快く請け合ってくれてるだけでもよしとしなきゃいけないなってこっちもみんなで話してたんだよ」
「あ…、そうですか」
なんだ。ってがっかりするのもどうかと思うけど。
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