第11章 桃の初めての恋人

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ちょっと拍子抜けしたのが顔に正直に出てたのか、佐内さんの表情がふっと緩む。 「やっぱりイベント、企画段階からみっちり取り組んでみたいか。今度そういうレンタルも考えてみてもいいかもな。まあ、あんまりうちのグループばっかりわがままも言えないけど…。新規開店のコンサルタントでもちゃんと評価されてるってことだろ。いいことじゃんか」 「それはまあ、もちろん。ありがたい話だって思ってます」 わたしは生真面目に頷いた。そいつならどうぞどうぞ、持ってってくださいって言われるより上司の神谷さんがいや、そいつはうちに必要な人材だからってきっぱり言ってくれる方が断然嬉しいに決まってる。 だけど、そろそろグループ異動もあるかなぁとちょっと期待してた面もあったから。結構頻繁にこっちに呼ばれることも増えてきてたし。 だけどいつの間にか上の方では、わたしの与り知らないところで既にそういう攻防もあったのか…。 「そうすると異動は当分先かなぁ。四月になれば新人も入ってくると思うけど、うちのグループにも」 佐内さんはわたしの逸る気持ちを宥めるようにのんびりした口調で相槌を打った。     
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