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「ちゃんとお客さん来てるかな、とか契約が終わったあとも時々顔出しちゃったりとか。開店一周年でちょっとしたお祝いをするから、って招んでもらったこともあります。みんな元気でやってるなって思うとすごく嬉しくなる」
彼の目が眼鏡の奥で優しく和らいだ。
「だろ。羨ましいってのはそういうとこ。どっちがどうとかは言えないよな。俺も一回くらい出てみたいかな、今のグループ。入社以来ずっとこれだから」
「佐内さんこそ上の人が手放さないでしょ。むしろ滝澤さんが動いたら、そのあといつかリーダーになるんじゃない、グループの」
「ああ、…うーん」
曖昧に濁したのは多分普段からそんな話も出てるからなんだろう。
「そしたら俺、柚野を絶対こっちに呼び寄せるからな。それまでそっちで経験積んでおけよ。今の仕事で得たものをちゃんとイベント分野でも活かしてもらうからさ」
「はい!」
疲れも吹っ飛ぶ思いでにこにこと勢いよく返事した。これでいい。
きっとわたしはこれからも、こうしてこの人のそばにいられる。あと何年先の話をしてても全然大丈夫。
それまでもこの距離感が変わらずにいられたらそれ以上のことはない。
彼はそんなわたしの顔を柔らかな眼差しで眺めていた。ふと沈黙が走り、バックヤードにも微かなクリスマスソングのBGMが遠く響いてくる。
「…クリスマス、終わっちゃうな」
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