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「いいのか、そんなことでお前。まあ俺も他人のこと言えないか。入社以来この時期っていったらもう毎年イベントだから。全然ないな、長らく。そういうの」
彼もさほど気にする風でもなくそう呟く。わたしはちょっとほっとして気軽に受け応えた。
「そうかぁ、そしたら彼女さん結構気にするかな。ひとによりけりだと思うけど。いつもいつもクリスマス一人とかだとさすがにどうして、と思うかもしれないよね」
彼は読みにくい表情を浮かべて素っ気なく肩をすくめた。
「俺もこのところずっといないよ、そんなん」
「あ。そうですか」
「うん」
どう反応していいのか。満面の笑みを浮かべるわけにもいかないし。何となくお互い黙り込みつつ、まあ内心ではよかった、と安堵する。実はずっと長い付き合いの彼女がいて今度結婚するんだ、とかある日いきなり切り出されるとかいう可能性は今のところ薄そうだ。
自分がそのポジションに入れるとは全然思わないけど。それでも彼の隣の席が空いてるって思うとやっぱり何となく嬉しい。わたしは表情に出さずにこにこと機嫌よく胸の内側でだけ微笑んだ。
彼がふと、なんとも言えない表情で顔を上げて改まってわたしを見た。
「柚野。…なんか、ついてる。顔に」
「え、やだ。…どこ?」
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