第11章 桃の初めての恋人

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この人みたいに周りの気持ちを楽にして、その場を明るくできる人に少しでもなりたい。そのためには自分も明るい表情で、相手を緊張させないように。自分の怯みや気後れはそれとなく後ろに置いて、なるべく物事のいい面を見る習慣をつけよう。 今でも仕事をしてる時は常にそういう心構えでいる。もしかしたら普段でも自然とそう振る舞う癖になってるかも。前向き、明るく。その場の雰囲気をほぐしてみんなの気持ちを楽にする。そうすると意見やアイデアも出やすくなって全体のパフォーマンスが上がる。 最初に佐内さんに教えてもらったことが骨身に沁みてる。そのことをたまに思い出すと何とも言えない気持ちになる。 あの人と一緒にずっと仕事をしたかった。だけど、そんな日はもう二度とやってこない。 そこでわたしは自分の感情に固く蓋をする。これ以上このことについて考えることはまだできない。 彼と同じグループになれないのは覚悟してたけど、フロアが別になったのは心底落胆した。ビル二階分だけのオフィスなのに!二分の一の確率で離ればなれになるとは。全くわたしはついてない。 一緒に毎日仕事ができなくても、背の高いすらっとしたあの姿を目の端で見るだけでも元気とやる気が出るってもんなのになぁ…。     
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