第11章 桃の初めての恋人

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クラスみたいなところだと大抵出だしで上手く馴染めないで居心地の悪いままで終わる。どういうわけか部活やクラブだとそうでもない。同じ空間に同年代がみち、と詰められて同質性を求められる場所よりはもっと融通無碍な、雑多な集団のなかの方が思うように動けるし自分を出せる。だから、無理してたかって言われると意外にそうでもない。社会人になって確かにキャラは変化したけど自然な成り行きでそうなってるように自分では思えた。 「桃ちゃんはいつも元気で楽しそうだねぇ。なんかこっちまでつられてやる気が出てくるよ」 そんな風に言われて得意先でも結構可愛がってもらったし、他の部署で人手が足りない時はよく指名を受けて駆り出された。まあ、新人だからまだ重い責任もなくて遊軍みたいなものだし。そうやって早い段階で社内でも自然と顔が広くなっていった。 ほんとにわたしはこの会社が性に合ってる。これは思ってもみなかった社会人生活で、自分はラッキーだなと実感しつつ仕事が楽しいと思える喜びをしみじみと噛みしめていた。 そういう中で、自然と佐内さんのグループの企画するイベントの手伝いに呼ばれる機会も増えていった。 元より彼らのグループは基本のメンバーを少なめに編成されていて、企画立案の段階では少数精鋭、いざ開催となると援軍を各部署から集めるのがデフォルトなので。そういう時新人のわたしが呼ばれやすいのは必然なのだが、やや小規模のちょっとしたイベントの時なんかはそれほど人数が必要でもないので、今回は柚野さんとあと数人で充分、とご指名を頂くこともあった。     
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