過去話

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「2人とも…逃げろ。あいつに捕まったら何されるか分からない…」 「ん?どうしてだ?」 「…僕は会ったことはないけれど…多分、〝酒呑童子〟でしょう。僕には何処が危険か分からない…」 「そりゃあそうだ。名前しかお前に伝えてないし、伝えたくもないからな。あっちの戦いの方に行こう。」 僕らは暗徒に付いて行く。後ろから大きな声で「そうだ。身長150㎝ぐらいの髪の長い金髪の子が何処か知ってるか?」と聞こえてきたが、スルーしよう。お兄ちゃん曰く、怖い物は女の嫉妬と林斗の怒りだけらしい。そんなお兄ちゃんが恐れるのは、よっぽど怖い物だけだ。 「決まったぁぁ!カーリー・ルマリート!10戦連勝のザンギエフを圧倒だぁ!」 その騒ぎの所に近づくと、そんな叫び声が聞こえてくる。場所に着くと、見た目は完全にボクシングのリングの上で、解説者と、金の髪を後ろに纏めている、鎧を着た麗しい女性が立っていた。 「さあ!このカーリー・ルマリートに挑む者はいるのかぁ!?その者が愚か者になるか、チャンピオンとなるかはその者次第!挑戦者求む!」 解説者…だよね?の隣にいるカーリー・ルマリートと呼ばれていた女性は、軽く微笑み、言った。 「もし私が倒されたら、私がお嫁になって差し上げますわ。私、私より強い殿方が好きですの」 その瞬間に、歓声が上がる。だが、挑戦者は名乗り出ない。恐らく、ザンギエフと言う者が圧倒されたから、無駄なだけだと思っているんだろうね。 「…林斗。絶対に名乗り出るなよ?お前が出たらきっとあいつにバレ」 「僕!戦いたいです!」 「おい林斗!」 「ほらほら、よく言うじゃん。押すな押すなは押せの内って。」 「嫌い嫌いは好きの内じゃね!?それダチョウのやつだから!お笑いだから!」 「安心しろ暗徒!林斗が負ける事は無い!直感だ!」 「勝つ負けるどっちでも、勝負したら駄目なんだよぉ~!」 「おおっと!ここで名乗り出たのは何処の誰だぁ!?」 …そうだ。身長足りない。というわけで、空中に立つ。 「ここだ!僕と勝負してくれ!」 「まじかよ…あんなガキ、しかも女かよ。」 「勝てるわけねぇよ。あのザンギエフでさえ圧倒されたんだぜ?」 「ふふ、いいですわよ。ガラルリム王国左大臣様?」 勝てるわけ無いと言っていた観客は、カーリーさんがそう言った瞬間にざわつき始める。 「まじかよ…あんなガキが、左大臣の異世界人!?」
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