0人が本棚に入れています
本棚に追加
「2人とも…逃げろ。あいつに捕まったら何されるか分からない…」
「ん?どうしてだ?」
「…僕は会ったことはないけれど…多分、〝酒呑童子〟でしょう。僕には何処が危険か分からない…」
「そりゃあそうだ。名前しかお前に伝えてないし、伝えたくもないからな。あっちの戦いの方に行こう。」
僕らは暗徒に付いて行く。後ろから大きな声で「そうだ。身長150㎝ぐらいの髪の長い金髪の子が何処か知ってるか?」と聞こえてきたが、スルーしよう。お兄ちゃん曰く、怖い物は女の嫉妬と林斗の怒りだけらしい。そんなお兄ちゃんが恐れるのは、よっぽど怖い物だけだ。
「決まったぁぁ!カーリー・ルマリート!10戦連勝のザンギエフを圧倒だぁ!」
その騒ぎの所に近づくと、そんな叫び声が聞こえてくる。場所に着くと、見た目は完全にボクシングのリングの上で、解説者と、金の髪を後ろに纏めている、鎧を着た麗しい女性が立っていた。
「さあ!このカーリー・ルマリートに挑む者はいるのかぁ!?その者が愚か者になるか、チャンピオンとなるかはその者次第!挑戦者求む!」
解説者…だよね?の隣にいるカーリー・ルマリートと呼ばれていた女性は、軽く微笑み、言った。
「もし私が倒されたら、私がお嫁になって差し上げますわ。私、私より強い殿方が好きですの」
その瞬間に、歓声が上がる。だが、挑戦者は名乗り出ない。恐らく、ザンギエフと言う者が圧倒されたから、無駄なだけだと思っているんだろうね。
「…林斗。絶対に名乗り出るなよ?お前が出たらきっとあいつにバレ」
「僕!戦いたいです!」
「おい林斗!」
「ほらほら、よく言うじゃん。押すな押すなは押せの内って。」
「嫌い嫌いは好きの内じゃね!?それダチョウのやつだから!お笑いだから!」
「安心しろ暗徒!林斗が負ける事は無い!直感だ!」
「勝つ負けるどっちでも、勝負したら駄目なんだよぉ~!」
「おおっと!ここで名乗り出たのは何処の誰だぁ!?」
…そうだ。身長足りない。というわけで、空中に立つ。
「ここだ!僕と勝負してくれ!」
「まじかよ…あんなガキ、しかも女かよ。」
「勝てるわけねぇよ。あのザンギエフでさえ圧倒されたんだぜ?」
「ふふ、いいですわよ。ガラルリム王国左大臣様?」
勝てるわけ無いと言っていた観客は、カーリーさんがそう言った瞬間にざわつき始める。
「まじかよ…あんなガキが、左大臣の異世界人!?」
最初のコメントを投稿しよう!