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大好きだった先輩…
私の片想いだった…
いつか先輩の彼女になれるといいな…と淡い夢を見ていたが、今日その夢は儚く砕け散った。
仕事も終わり、私は無気力のまま会社の近くにある行きつけのカフェへ立ち寄った。
「いらっしゃい、優子さん。」
店のドアを開けると、中からマスターが笑顔で声をかけてくれた。いつもニコニコしていておっとりしている癒し系のマスター。見た目は若く見えるけど、何歳だろう?前にマスターに年齢を聞いたが微笑むだけで教えてくれなかった。私はこのカフェのコーヒーや店の雰囲気が大好きで、昼の休憩時間や仕事終わりに良く利用している。
いつもは開口一番に仕事の愚痴や日々の出来事をマスターに聞いてもらうのが日課となっていたが、今日は何も言わずカウンター席の一番端に座り、静かな声でホットコーヒーを注文した。
マスターも私の醸し出す空気を読みとったのか、何も聞かず注文したホットコーヒーを入れ始める。その間も私はただただボーっとしていた。
「お待たせしました。」
マスターはホットコーヒーを私の前にそっと置く。私は無言のままコーヒーカップに手を添えた。
!?
マスターの入れてくれたホットコーヒーを見て私はハッと我に帰る。そして目から涙が溢れてきた。
「やだな。何で涙が…。」
必死に涙をこらえようとするが、次から次へと涙は零れ落ちる。そんな私を見たマスターはハンカチを私に渡して、店の外に出ていたopenの看板をcloseにして店の中へ戻ってきた。
「マスター…お店…。」
「いいんですよ。今日はもう優子さん以外のお客様はいませんし、ゆっくりして下さい。」
マスターはキッチンで片付けを始めた。静かなカフェの店内にカチャカチャと洗い物の音が鳴り響く。
そんなマスターの心遣いが嬉しかった。
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