ラテ・アート

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「気を遣わせちゃったね。ごめん、マスター。」 私は少し笑顔を取り戻す。マスターもニコッと微笑み返してくれた。 「それにしてもコレ凄いね。ラテアートっていうんだっけ?」 私の前のコーヒーの上には白いミルクの泡で可愛らしく笑う猫ちゃんが描かれていた。私はそのラテアートに癒され気が緩み、涙が溢れてしまったのだ。 「今日の優子さん、いつもと様子が違ったので少しでも元気になればと…。今、ラテアートにハマってるんです。」 「ありがとう。めっちゃ元気出た。実はさ、今日失恋しちゃって…。」 泣き終えてスッキリした私は、マスターに話を聞いてもらった。 好きな人の話… 今の会社に入社して、気さくで面倒見の良い同じ部署の先輩を兄の様に慕っていたが、気がつくと先輩に恋心を抱くようになっていた。何かと構ってくれる先輩にもしかして先輩も私の事を…なんて思ったりもした。 でも違った。 今日いつもの様に会社に出社すると、先輩の周りに人が集まっていた。何だろう?と思って私も先輩に近づくと、衝撃の一言が耳に入る。 『結婚おめでとう。』 先輩、彼女いたんだ。 結婚するんだ。 そこから私はよく覚えてない。でもきっと誰にも傷心した私に気づかれないように、いつも通り元気な私を演じたはず。
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