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「優子さんはその先輩に自分の気持ちを伝えないのですか?」
私の話を聞いて、マスターが尋ねてきた。
「伝えないよ。告白したら私は吹っ切れて次の恋に進めるかもしれないけど、告白された先輩は困っちゃうじゃない?だったら私だけ想いを秘めて苦しめばいい。」
「優子さんは優しいですね。辛い時は言って下さい。いつでも話を聞きますから。…あ、コーヒー冷めちゃいましたね。今、入れ直します。」
「大丈夫、冷めてないよ。心が温かくなった。優しいぬくもりを…ありがとう、マスター。」
私はラテアートを見ながら微笑む。嘘は言ってない。もう少しこの心温まるラテアートを眺めていたいと思った。
「今日、このカフェに立ち寄って良かった。マスターにたくさん元気とぬくもりを貰えたから。」
私はそう言ってラテアートのコーヒーを口にする。ほろ苦いコーヒーに甘いミルクが絶妙だ。勿体なさそうにチビチビ飲む私にマスターは笑っていた。
「また、ラテアートお作りしますよ。」
「やったぁ。次はどんなラテアートかな。」
「そうですね…ハートとかいかがです?」
ハート…
マスターの事だから意味はないと思うけど、私はハートのラテアートを想像して一人でドキッとする。そしてマスターの顔をチラッと見ると、チラ見に気づいたマスターはニッコリ微笑み返してきた。
何か癒し系のマスターが小悪魔に見えてしまう。私は少し顔を赤くし思わず目を逸らした。
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