皚々たる。

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 ひとつの傘へ共に。冬の色を眺めながら庭の亭へと辿り着いたのだが、ユエは其の亭を通り過ぎ様と、カイの衣の袖を引き足を進める。 「おや。ユエ、雪を眺めるのでは無いのか」  目を丸くさせて訊ねるカイへ、ユエは頬を染める。本の少し反れる視線。 「あの、此れが良いのです……」  ユエは、カイが形にした赤い傘を指差した。カイは、まだ広げたままの傘へ一度視線を向けて微笑む。其れは、幸せそうに。 「そうか。では、此のまま彼方へ行ってみよう」 「はいっ」  再び歩き出す。共に並んで、傘におさまる様に寄り添って。亭で雪を眺めるよりも、きっと幸せな距離だろう。 「よく降るな。明日には、此の庭も白に染まるだろう」  舞う雪へ、カイが何気にそう口にした。ユエは、此れに瞳を輝かせて傍らのカイを見上げる。 「本当ですかっ。明日には積もりますかっ」  何と強い期待を込めた瞳と声か。カイは此の可愛い反応に吹き出しそうになるのを堪え、何とか穏やかな笑みに留めようと。 「ほう……ユエは雪が好きなのだな」 「はいっ、大好きです。兄と一緒に、沢山遊んだのです」  そう言って、ユエは嬉しそうに雪を眺める。懐かしく、大切な思い出に胸馳せて。冬には必ずあった光景も、もう容易く叶うものではない。己にも、兄にも今の立場があるから。其れを改めて受け止めると、表情は徐々に寂しげな笑顔へ。そんなユエをカイが見詰める。カイには、ユエの心が分かるのだから。 「汝の兄程、要領良くは無いだろうが……今年より私と積もった雪を楽しむか」  ユエは驚きながら、カイを見上げる。遠慮がちに、でも期待も入り交じって。 「えっ……でも、お仕事……」 「今決めた。雪が積もったら、毎年一日は必ずユエと遊ぶとな」
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