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飛び付くユエを抱き止めるカイ。其の手に持つ傘が軽く揺れる。
「カイ様と雪で遊べるなんてとっても嬉しいです」
カイを見上げるユエの無邪気な笑顔。何と愛くるしいのだろう。カイは、思わず其の唇へと口付けを。
「ん……」
優しく包むように重ねられた唇。深くはないけれど、互いを感じる心地好い熱。もっと欲しい、そう強く願う迄に名残惜しげに放された。
「こんな処で、そんなに愛らしく微笑むな」
耳を擽る低い声。間近にあるカイの美しい顔、冷たく見える青い瞳も熱を帯びていて。ユエの顔は、真っ赤に染まり思わず其の視線は反らされてしまった。
「う……だ、だって……」
カイの衣を握り締め、遂に俯く顔。カイにとっては、ユエの素直な反応や仕草ひとつが心乱される程に愛らしく見えてしまう。出たのは、軽い溜め息と微笑み。無意識に誘いを掛ける罪なユエへか、そんなユエの全てに囚われている己への呆れか。
「冬が訪れた。此れより暫く、眺めるのは雪景色となろう……本日は、此処迄にしておこうか」
髪へ触れる指先、声。優しくて、暖かくて。そして、其れは妖しく甘美な心地好さも誘うのだから。せっかくの雪景色も、もう瞳に映らぬユエはカイへ身を寄せて。
「カイ様って、時々意地悪です……」
愛しい御方へ、細やかな抗議。カイは、ユエを片腕で抱き上げた。
「私に言わせると、ユエの方が意地悪だが……せっかく雪景色を眺めに参ったのに、ユエの事しか考えられなくさせられた」
ユエは、己と全く同じ事をカイが感じてくれた事への嬉しさと、更に熱が上がり疼く身の恥じらいに声は出ない。カイへしがみついて、顔を隠してしまう。
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