皚々たる。

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「――カイ様、雪玉は投げて貰えないとつまんないですっ」 「そう言われてもな……ユエへ其の様な……」  人の形であるカイの肩へ乗るユエが、カイへ軽いお説教。散々遊んだカイとユエ。山を後にし、空より雪景色を眺める為に遠回りの帰路。どうも、雪玉の投げ合いで手心を加えられた事が御不満の様だ。 「勝負は勝負ですっ」  頬を膨らませるユエへ、カイは笑う。 「ならば良いのさ。本気を出せば、きっと私の勝利だ」  等と挑戦的な。ユエの頬は更に膨らんで。 「言いましたね。私の方が経験豊富なんですよっ」  ユエは、カイの白い髪を軽く引いて抗議する。憤慨する姿も可愛らしい事だと、余裕の中笑いを堪えもしないカイ。  そんなじゃれ合いもあり、ユエの村の近くを通り掛かった。其処でふと、ユエがある景色を瞳に映した。 「あっ、あれは何なのですか」  其の光景を訊ねたユエが差す指の先へ、カイも視界を映した。カイは目を見張る。何と、其れは。 「雪崩だ……っ」  答えと共に表情を強張らせるカイへ、ユエの表情も不安の色を見せた。 「そ、其れは何なのですか」 「山へ積もった多くの雪が崩れ、流れ行くものだ。其の力は強大で、全てを飲み込み破壊する程にもなる」  ユエが青ざめる。カイの表情が変わった意味を理解したのだ。 「え……あ、彼処は……だって……」  そう呟き、身を震えさせるユエ。雪崩が進む先にあるのは、ユエの里。両親や、仲間が住む村なのだ。  カイは、震えるユエを強く抱き締めた。そして。 「ユエ、此処に居ろ」  強くそう言うと、カイはユエの身を光りで包んだ。其れは、ユエを守る様に球体となり空へ浮いている。 「カイ様……っ」
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