皚々たる。

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 元気な声と共に、胸に飛び込むように身を寄せたユエ。見詰め合い、交わされた口付けは又熱くなってしまったのだけれど。  そんなカイとユエへ訪れた運命の日。しかし、其れは何事も無く過ぎ去った。カイはマオへ、此の感謝の思いを伝えるべく書簡を認めた。勿論、ユエからの感謝も。ヂューアを介して、其れは黒龍へ仕えるマオの元へ。 「――珍しいな。お前がこんなに柔軟に動くとは……焼きが回ったか」  リンは、カイとユエの感謝が込められた書簡を手にマオへ一言。カイより書簡が来たと、丁度仕事に部屋へ来ていたリンへも軽く話をしたのだ。長く付き合いがあるリンには、今回マオがした干渉は、かなり意外なものであったから。  マオは仄かに笑みを浮かべ、リンの手より書簡を取り上げる。 「受けた優しさへ、感謝を示したのみ」  そんな言葉と共に。リンは、マオの顔を楽しげに覗き込んだ。 「余程嬉しかったんだな……かぁわいい、マオちゃん」 「リン……っ」  聞き捨て成らぬ言葉をと、青筋を浮かべ表情をひきつらせるマオ。しかし、大人気ないと咳払いの後で。 「ユキが、希望を貰えたと嬉しそうに笑ってくれた……人であるユキは、孤独と罪悪感を他種族へ常に抱いているのだろうからな」  そう言いながら、マオは手にある書簡を穏やかな瞳で見詰める。本来は、出過ぎた事であった。だが、カイとユエへも笑顔を与える事が出来て満足であると。  そんなマオの様子を、眺めていたリンが。 「蛇の恩返し」  そんな事を呟いた。マオは一瞬目を丸くさせたのだが、何故か壺に嵌まったらしく珍しい事に吹き出してしまったと云う。
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