2部

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 セイヴェ刑事は一人、イルミネーションの街中(まちなか)に車を走らせていた。一刻も早く被害者を見つけなければ……!捜索願いが出されて、もう二十日も経っていた。  彼女の周りの人に事情聴取をしていた時、花屋がこんな事を言っていた。 “結婚式は、俺と彼女が好きなアイビーのある場所でひっそりと行うんだ”と。その時はメルヘン平和ロマン主義野郎としか思わずに受け流していたが――。あのサイコ野郎、自分で殺しておいて”妻は病死した“なんて嘘までつきやがった!それに、今考えりゃあ”行いたい“ならともかく”行う“だなんて、既に相手がいるような言い方だ。そして、アイビーの花言葉は……! ――どうか生きていてくれ!! エイルムの無事を祈り、二人の元へとアクセルを踏み込んだ――。  車を止め、アイビーの絡まる廃堂を見上げる。堂内にもそれは侵食しており、鉄などのきつい臭いが充満していた。しかし、それらが気にならないほどの衝撃的な光景に、愕然(がくぜん)とする。 左右にある長椅子(ながいす)には人々が座っていた。いや、人だった、と言うべきか。腕がない者、足がない者……。ふと、右に花瓶があるのに気付き、ライトで照らす。腕だった。何本もの腕が花瓶に飾られていたのだ。口を手で押さえる。では、足は……?ハッと左側を見て、ライトを落とした。その場に嘔吐する。足は楽器に見立てられていた。死者が音色を奏でることは無い。  花屋による幻影が(あふ)れかえるこの堂内に、ただ一つの真実があった。 エイルムは包み込まれる形で、共に息絶えていた。離すまいとアイビーが二人の手首を結んでいた。もはや死体と言うより、それは、一つの官能的芸術作品のようだった。 血色の無い、陶器のように白く(つや)めく肌が月明かりに照らされた時、一人の絶叫が月夜に(とどろ)いた――。
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