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運命の日
ああ、ついにこの日が来てしまった・・・
涼太がドス黒の生贄になってしまうこの日が。
「おい!青、この嘘つきヤロー!ぜんっぜん消えねえじゃねーか!」
朝からシャツを捲りあげ、生白い腹部に点々と残るキスマークを俺に見せつけてくる。
こいつ、こんなにうるさいキャラだっけ?
と思いつつ「ああ」と生返事をする。
今、俺はそれどころじゃないんだよ・・・
「聞けよ、ったく。服着たままセックスってアリなのか?」
セックス・・・はぁー・・・
俺は無力だ・・・結局、あれ以上涼太には手を出せず、この日を迎えてしまった。
「じゃあ、行ってくる、オレが無事帰還できるように健闘を祈れよ」
右手で作った拳を自分の左胸に押し当て、腹を括った涼太は、顔を強ばらせながら俺に言った。
・・・はぁ~・・・
「青も早く出ないと、講義、間に合わねえぞ」
涼太はそう言って部屋を出た。
「講義なんか出れる状態じゃねえよ」
ひとり残された部屋で小さく吐き捨てる。
・・・決めた。尾行する。
俺は猛ダッシュで着替えて、変装用に伊達メガネをかけ、涼太の後を追うために部屋を飛び出した。
駅まで来ると、涼太が電車に乗り込む姿が見えて、俺も急いで隣の車両に乗り込む。人混みの中、なんとか涼太が見える位置に移動し、監視を続けると、涼太がビクッと肩を上げて後ろを振り返る。
なにやってんだ、あいつ
涼太の後ろに中年のサラリーマンが立っていて、涼太はそいつの顔を無言で睨み、フイっと前を向きなおして俯いた。
涼太の顔がみるみる赤くなっていく。
・・・もしかして、痴漢されてんの?
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