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「じゃあ、早口言葉とか?」
「いいね、早口言葉。そういうのを期待していたで。なにか言ってみ、ほらほら」
「きのうはー、あめだったしー、わたしー、すごくー、ゆーつなのー」
「それはゆっくり言葉じゃ!!」
「いやいやいや、じつはこれ、私の秘密作戦なんだけど」
「なに?」
「楽器のレッスンの人たちが言ってるわけよ、速いところを上手く弾くには、まずスピードを落として練習する、って」
「だからゆっくりかい」
「そうそう。ゆっくりしゃべる練習をしていると、きっと速くしゃべるのもできるようになる、ってわけ。天才か私」
「どう考えてもただのバカにしか思えないが」
「でーもー、みんながゆっくりしゃべればー、普通にしゃべっただけでもー、早口言葉になるって気がするんですけどー」
「すごいな、声の仕事を目指してゆっくりしゃべる練習をしている人は、世界でおまえだけだよ」
「そーおー?」
「じゃあ、その『そーおー?』ってやつに、ビブラートかけてみ」
「……」
「はい、どうぞ!!」
「そ~~お~~」
「おお、やればできるじゃないか」
「わ~~れ~~わ~~れ~~わ~~う~~ち~~ゅ~~う~~じ~~ん~~だ~~」
「扇風機の声だ、ノドに手をあてなくても扇風機の声になっとる!!」
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