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外はずいぶん吹雪いているようだ。ガタガタと小屋が揺れている。私がここに来て3日、目的はまだ果たされていない。私は自分の分身ともいえる猟銃を布で磨いている。かたわらで小屋の主人である老人は囲炉裏に薪をくべた。
私がこのベクテン開拓地へやってきた理由は、開拓民を襲う凶暴な熊を駆除するためだ。単発式だが命中精度抜群の猟銃はここに到着してから幾度も整備し万全。あとは獲物を見つけ出し狩るのみである。
ベクテン開拓地はここ数年入植がはじまった西部辺境開拓地のひとつだ。厳しい冬がくる地域だが、土地と家が与えられ、農地を自分たちで拓く。開拓団の応募者は圧倒的に都市部の貧民が占める。開拓政策は都市の貧民対策と直結していた。
辺境地域の開拓は、今まで自然界への人間の侵入を意味する。ゆえに獣。特に熊による被害事件があとを絶たない。特に最近ベクテン開拓地で4家族10人が巨大熊に襲われ死亡する食害事件が発生し大騒動に発展。私のような個人猟師と植民省から派遣された討伐隊が連携して駆除作戦が展開されている。
討伐隊は24時間体制で4軒の被害宅付近に防衛線を構築している。熊がいると思われる一帯に立ち入るのは個人猟師と決められた。 猟師が仕留めればそれでよし、猟師が熊を討伐隊側へ追い込んで一斉射撃で仕留めてもよしという状況だ。これ以上被害者を出すわけにはいかない。
私は討伐隊本営の紹介で開拓前から住んでいる老人の家に間借りしている。
「神々がざわついている。」
「ざわついている?」
老人は火箸で炎を突いた。そして改めて薪をくべた「空気でわかる。神々がざわついている。」
老人は囲炉裏にかけた鍋から汁をよそうと、私に出してくれた。
「しかし・・・明日私は森に入ります。そういう役目ですから。」
熱い汁をすすりながら私は言った。
個人猟師は持ち回りで熊を追うことになっており。明日私が森に入る出番だ。
「わかっている。巨熊の怒りがそうさせるのかざわつきを感じる。十分な用心が必要だ」
「十分な用心とは?」
「こころだ。」
老人の語気は強くなった。
「こころを強く持てば、神の意識に対抗できる。」
猟師のおまえさんなら心配ないと思うがのうと老人も汁をすすった。
私はすこし意味を理解できかねていたが、心を強く持つということは素直に理解することにした。
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