神域

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 次の朝私は猟銃を肩に担ぎ、弾帯を腰に巻いて、討伐隊本営に向かった。  本営は開拓団の団長宅に置かれており、交代している討伐隊員や猟師、討伐隊に志願した開拓民などでごった返していた。そんな中わたしは、副隊長の開拓団長にあいさつを交わし、これから森へ入る旨を告げた。団長は満足な睡眠も取れていないのか憔悴した表情で、今日こそ頼む。とひとこと述べて送り出された。  巨熊の襲撃を受けた4軒は隣同士ならんでおり、背後に深く広い森が広がっている。開拓民たちはこの森を拓いて農地にするべく日々作業に勤しんでいた。  4軒は立て続けに襲われていずれも親子すべて家族が全滅してしまっており、家屋内部は天井まで血しぶきがはねた悲惨な様相を呈している。防衛線の討伐隊員は誰一人家屋に近づかず。異臭の中外で焚火にあたって警戒を続けた。  動きがったのは展開初日、巨熊が現れ討伐隊が一斉射撃を浴びせた時のみである。しかも致命傷には至らず。森の中に姿を消した。それ以降熊の目撃情報はなく、個人猟師の探索でも発見の足掛かりさえ見つけられてはいなかった。  私は防衛線の責任者にあいさつをした。植民省で害獣問題に現場で対応する事務官なのだそうで、軍服に似た制服を着て書類片手に指示を飛ばしている。 「今日はあなたか、必ず仕留めて仇討してやりましょう。」 事務官はやや疲労を感じさせるがハリのある声で、情報を提供してくれた。夜明け前に黒い影を見た討伐隊員が数名おり、射撃を行った。影は森に消えたがその後血痕が確認されているという。  私は地図でその位置を確認すると森に立ち入ることにした。
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