神域

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 昨晩の吹雪によって白い空間が補強された雪面だ。そこに明らかな血痕。足跡。点々と森の奥へ続いていた。討伐隊員たちはそれが巨熊であったか確認してはいないが手応えはあったようだ。まず血痕をたどってみることする。  森はいつ入っても静かだ。時折獣の声が遠くでした。私は猟銃を肩からおろして、いつでも撃てる態勢で進んだ。警戒は前方だけではない。後ろから一撃されて命を落とした猟師をいくらでも知っている。全方位に神経を集中させてゆっくり進む。  それは白い世界の黒い異物に感じられた。最初進行方向左手にわずかな黒い影を認めた。私はとっさに木の陰に隠れて物体を、黒い異物を正面に確認した。  熊だ。2メートルは優に超える巨熊だ。10人を食い殺した殺人熊に違いない。50メートルから距離を詰める。   巨熊警戒は討伐隊の防衛線に向いているのかこちらに気付く気配はない。30メートルまで近づく。20メートルまで近づいた。依然こちらに気づく様子はない。私は猟銃を構えた。照準の狙いををがら空きの心臓につける。あとは引き金を引くだけという瞬間にそれは起きた。 ーー人よ、我が声をきけ。 巨熊が話し始めた。視線、圧力が襲いかかる。私は金縛りにあったように動けなかった。
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