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さて、ではこのバーテンダーは何故嘘を言ったのか? 何故知らないなどと言うのか?
犯罪者をかばう理由は様々ある。
よくあるケースとしては、犯罪者が身内や親しい間柄ということ。または、何らかの利益を享受し合う関係であること。すなわち共犯者ということだ。
他にもストックホルム症候群や、リマ症候群のケースもあるが、この件には該当しないだろう。
私はこのバーテンダーがブランドン・ウォルシュの仲間/共犯者だとは思わない。
何故なら、この事件は――被害者らとの面談結果で明らかだが――ブランドン・ウォルシュの単独犯行だったからだ。
証言内容を精査したところでも、背後に他の人物の影は見当たらなかった。
可能性としてあるのは゛親しい間柄゛ということだろうか?
ブランドン・ウォルシュはこのバーの常連客ということだ。
このバーテンダーは奴と顔を合わすにつれ、懇意になったのではなかろうか?
ふたりの間には酒があり、ふたりの間で交わされた会話の中には、住処や仕事、どんな女が好みなのか……?
――などの内容が交わされていたとしても不思議でない。
その会話の中で、奴さんが自分の武勇伝として各州様々な女をモノにしたと吹聴していたのかもしれない。
そんな、与太話の数々をこのバーテンダーは聞かされていたのかもしれない。
しかし、だからといって、゛ブランドン・ウォルシュ゛はこのバーテンダーが身柄をかばうに足りる人物だろうか?
私ならとっとと奴のすべてを洗いざらい話して、我々のような厄介者を追っ払いたいと考えるだろう。
なにせ、奴さんはどこの馬の骨とも知れないフーテンの流れ者だったからだ。
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