キャシーと親愛なる友人たち2 背徳の陰に潜むモノ

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 ……だが、私はこれからやらなければならない仕事のことを思うとひどく残念な気持ちになった。  私は、これからこのバーテンダーに質問をしなければならない。それは決して友人となるための会話ではなく、なりゆきによっては尋問になるものかも知れない。  招かれざる客として煙たがられるのは避けられないだろう。因果な商売だ……神はどうして私にこんな仕打ちをするのか?  私にとって、このバーテンダーは<メガミリオンズ>の高額懸賞金を当てたようなもので、めったとない貴重な巡り合わせだった。アメリカ広しといえども、こんなに心地好く酒を飲ませてくれるバーテンダーはそうはいない。各地のバーを飲み歩き、満たされない気持ちでいた私をようやく愉しませてくれる人物と出会うことができたのだ……ここには、ただの客として訪れたかった。残念な気持ちとはそういうことだ。
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