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「ん、んっ!」
アンダーソンが白々しい咳払いをした。
私の隣でアンダーソンが(まったく無粋な奴だ。酒といったらバドワイザーしか知らん。いまもバカのひとつ覚えでバドを注文し飲んでいる)いらつきながらいる。
そろそろ潮時か……繰り返し思うが非常に残念でならない。
私はうしろ髪を引かれる思いで、二口目を舐めた。
「おほん! おほん!」
再び、アンダーソンの催促だ。
やれやれ、わかったよ。虎の威(国家権力)を借りる狐の青二才が。
「マスター、ちょっと訊いてもいいかな?」
私はこれがとても嫌なのだが、FBIのバッチが付いた身分証をそおっと開いて見せた。
バーテンダーの眉間に皺が寄る。そうだ。誰でもそういう反応になる。
「わたしは、アンダーソン捜査官! こっちはモート捜査官だ!」
仰々しい態度でアンダーソンが横から言い放った。
やれやれ、声をひそめた意図がわからんのか?
奥のテーブル席にいる二人組の男たちに目をやった。
案の定アンダーソンの言葉に驚いて体が固まっている。
「FBIが、どういったご用件でしょう?」
バーテンダーの声にも等しく警戒感がこもっているのがわかった。
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