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厄介だ……これでは何ひとつ正しい情報を得ることはできないだろう。
アンダーソンは、なおも大仰に言った。
「我々は、人を探している! ここでよく見かける奴がいるだろう? 赤毛のパーマで、背が低く、トム・クルーズに似た男だ!」
バーテンダーは思案気な顔をした。
「いや、アンダーソンさん。ここでわたしがよく見かける男は、クルーカットで、背が高く、ジョージ・クルーニ似の奴でしたよ……」
アンダーソンの口角が吊り上がった。
「モート捜査官! 奴のようだ! 間違いない!」と勝ち誇った顔をした。
「……アンダーソンさん。それは……、わたしですよ」
バーテンダーがお道化たふりをして言った。
店内に爆笑が起こった。
テーブル席の二人組は腹を抱えて笑い、バーテンダーも苦笑いをしていた。
そして、かく私も声をあげて笑っていた。
「き、貴様ら! わ、笑うな! モ、モート捜査官! あんたまで笑うとは、どういうことだ!?」
「いやいや、勘弁してくれ、アンダーソン。そんな鎌掛け、<X―ファイル>でもやらんようなことをされたら笑ってしまうのは当然だろう」
アンダーソンは顔を紅潮させている。
「こ、このことは局長に報告するからな! モート捜査官!」
「ああ? やめとけ。赤っ恥をかくだけだぞ」
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