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「゛ブランドン・ウォルシュ゛という男です。ご存じですかな?」
オニールの目が大きく見開かれた。
それは、一瞬のことだったが、私は見逃さなかった。
「……いや、知りません」
「ん……? そうですか?」
「ええ……知りません。この男が何かしたのですか?」
オニールはカウンターの内からグラスを取り、表面をクロスで拭き始めた。
私は、このバーテンダーが嘘を言ったのが気になった。
我々はすでに聞き込みで、ブランドン・ウォルシュが足しげくこの店に通い詰めているとの情報をつかんでいたからだ。
情報の信憑性に若干の不安はあったが、今このバーテンダーが゛ブランドン・ウォルシュ゛の写真を見た驚きの目から、私はこの情報は正しかったとの確信をもっていた。
彼の驚いた目は、明らかにその者を゛知っている゛という反応だ。
したがって、バーテンダーの口からは当然「知っている」との返答がくるものだと思っていたが、意外だった。
私は話を続けた。
「この男は、゛連続強姦犯゛なのです。州をまたいで数々の女性に性暴力を働いた男なのです」
「えっ? この男が? そんな奴なのですか?」
オニールは驚いたが声音には訝し気があった。しかし、顔見知りの客が強姦犯であったら不快には感じるだろう。
オニールの目に険しさが表れた。
私は、彼の心情に変化が現れ出したと見てとった。
「連続強姦犯……」と、彼は呟いた。
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