キャシーと親愛なる友人たち2 背徳の陰に潜むモノ

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゛連続強姦犯゛と、私はこのバーテンダーに言った。  我々FBIはブランドン・ウォルシュを凶悪なレイプ犯として追っていた。  しかし、私はこの名目で奴さんを追っているのには、甚だ疑問があった。  当時、私はすべての被害者らと個別に面談(実に骨が折れる仕事だった)を実施し、訴えの詳細を訊いていた。  その結果、判明したのは、被害者らは、もともとブランドン・ウォルシュとは不倫や遊びでの付き合いだったということだ。決して、ブランドン・ウォルシュに無理やり犯されたということではなかったのだった。(この事実を知ったとき、私がさも呆けた顔をしていたとアンダーソンが言っていた。そりゃあ! そうだろうが!)  コトに至っては、奴さんに強引に迫られたというわけではなく、どちらかというと、自ら玄関を開けて招き入れ、その後、ソファーかベッドの上までご案内したというのが、ほとんどのケースだった。(なかにはキッチンのテーブルの上や、庭の芝生の上にご案内したというケースもあった)  だが、ブランドンと゛お戯れを楽しんだご淑女ら゛(あえて穏便な言い方をする)が、ことごとく体調を崩した。  どうやら性病を感染(うつ)されたらしい。  そこで、その中のひとり――ある地方の名士の奥ゆかしいご婦人で゛お戯れを楽しんだご淑女ら゛の代表格である――がブランドンを訴えたというわけだ。  他の連中も、いや、全員じゃないが、その訴えに乗っかったという次第で、  なんと、原告の数は53名にも上る。訴えなかった方々は16名。  そうなると、このような事件はFBIの管轄に移行する――州をまたいでの凶悪犯罪はFBIの仕事だ――ので、我々の出番となった。  訴えの内容の真偽は……私の知るところではない。  私とアンダーソンの仕事は、この変態野郎――鼻息荒く訴えたご婦人の言うとこの――を裁判官、陪審員の前に連れて行くことだ。
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