第1章 初めての依頼

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う~ん、と唸ってから虎之助は、 「とにかく予約をとって直接所長と話をしてください。  僕には依頼を受ける返事はできませんから」と言い含めながら 予約スケジュール表を確認する。直近で予約が取れるのは、明日だ。 すがる様な目つきに変わったマダムは明日また来ると言い、 手帳を広げて虎之助に告げられた予約時間を書きこんだ。明日、午後2時。 「ではまた明日おじゃまいたします。  所長さんがお戻りになったらくれぐれもよろしくお伝えください」 丁寧に頭を下げて、優雅な手つきで引き戸を開けて外に出てからもう一度、 マダムは小さく頭を下げた。ゆったりとした所作に育ちの良さを感じる。 けどお金の事となるとものすごい激しさをまき散らす。 後姿を見送りながら、大きな仕事を一つ終わらせた時のような疲労感に襲われた虎之助は大きく肩をまわした。
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