最終章 これにて調査終了

7/7
前へ
/112ページ
次へ
学生の頃、新宿のディスコで密かに火花を散らしていたのよ、 と教えてやりたい気もするが、小夜子の中で記憶が甦らないのであれば そのまま思い出の箱を閉じておくことにした。 「そうね、私達にとって新宿って最高の遊び場でしたものね。  どこかですれ違ったり隣り合わせていたかもしれないですわね。  若かりし頃の大切な思い出っていうことで」 さらりとすっとぼけて、弥生は思い出のケーキを口いっぱいに頬張った。 記憶の手繰り寄せに失敗した小夜子も大きな口にケーキを押し込む。 懐かしさと美味しさにニンマリと目を三日月にする中年女二人の横で、 彼女たちの共通の思い出など知る由もない虎之助は、 空っぽの店を気にしつつもケーキの皿を置くことなく黙々と味わった。 おわり
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加