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翌日、約束時間の5分前にマダムはやって来た。
ガラス越しに虎之助と目を合わせると、まるで数年来の友を相手にしているかのような
馴れ馴れしい笑顔で手を振っている。
ガラガラ・・と小気味よく引き戸を開けると開口一番、
こんにちは明智さん、と甲高い声をリズムに乗せた。
「あ、昨日はどうも・・所長!お見えになりましたよ、昨日の袋小路さんが」
マダムの名前は袋小路小夜子(ふくろこうじさよこ)。
予約を書きこむために最後の最後になって名を聞いた。
・・袋小路だって、自分だって変わった苗字じゃないか・・
心の中でヘラヘラ笑ってやった。自分たちのビジネスネームを小馬鹿にしておいて、
そっちだって似たようなもんじゃないか、と音を立てないようにして
虎之助は鼻を鳴らした。
呼ばれてすぐに暖簾の間から顔をのぞかせた弥生は、
店の真ん中で存在感を放っている女の顔を見た瞬間動きを止めた。
・・ん?この女・・なんか見たことがあるような気が・・
全体的に大造りなパーツの顔を、どこかで見た事があると目を泳がせた。
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