第1章 初めての依頼

2/12
前へ
/112ページ
次へ
「調査員の明智五郎です」 取り出した名刺を依頼人に差し出す手つきも随分と様になってきた。 柳虎之助が明智五郎を名乗って仕事をするようになって半年。 コノミ書店でアルバイトを始めてから二度目の青葉を見ることとなった。 この一年と二ヶ月。単純なルーティーンワークのほうが多いけれど、 高給だけど刺激が強すぎる仕事はあまりないほうがいい。 レジカウンターで客を待ちながらのんびりと通りを眺めることが、 虎之助にとっての安らぎのひと時となっている。 今日もそんな一日であってほしい・・ カウンター越しにまばらに行き交う人たちを眺めていると、 ガラス越しに一発で虎之助と目を合わせる人物が立ちはだかった。 引き戸に手を掛けたと思ったらその女性は、 なめらかに体をくねらせ店の中に滑り込んできた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加