待ちに待った下校時間

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待ちに待った放課後。 チャイムとともに教室を飛び出し、校門へと急ぐ。 深谷くんより先に校門で待っていよう。 来てもらうだけでも有難いのに、待たせるなんて申し訳ない。 「マーヤ!ちょい待ち!」 後ろから郁子が追いかけてきたので、私は仕方なく足を止める。 「これ、忘れてるよ!」 郁子に手渡されたのは、明日提出のプリントだった。 そう言えば、帰りに一人一枚とりに来るよういわれてたんだっけ。 「ありがとう郁子」 ホッと胸を撫で下ろすと、そのまま二人で校門に向かった。 「そんなに急いじゃって、健気だなぁ」 郁子がわざとらしくニンマリする。 「うっわ!めっちゃイケメンおる!」 「誰!?F高の制服じゃない!?」 周りにいた女子達の言葉に思わず動揺する。 予感は的中だった。 深谷くんは校門のところに堂々と立っており、うちの高校の女子達で人集りができていた。 「ちょ、もしかしてあれがマーヤのカレ!?」 高揚ぎみの郁子の声に、黙って頷いた。 ……しかし、あのなかに割って入って深谷くんに話しかけづらい。 今私が近づいたら、間違いなく「不釣り合い」と深谷くんまで白い目で見られてしまう。 やっぱり駅で待ち合わせするべきだった。 「おっ郁子、マーヤちゃん!」 女子達に囲まれている深谷くんを遠くから見つめていると、クラスの男子達がやってきた。 「今日ヒマ?カラオケいかねー!?割引券もらったんだよねー」 「いや、私は……」 その時、グイっと腕を力強く掴まれたと思うと、いつの間にか至近距離に深谷くんが現れた。 「深谷くん!?」 「………………」 いつもの無愛想な表情が、一段と険しくなっており、その剣幕に男子達はたじろいで逃げていく。 案の定、女子達に白い目で見られながら、私達は校門をくぐった。 「マーヤ、じゃあねん!彼氏さんも、どうもっす」 郁子が「明日いじり倒すぞ」と言わんばかりの満面の笑みで私達に手を振った。 私は苦笑いをしながら手を振り返し、深谷くんは黙って小さく会釈した。 「……………………」 「……………………」 いつも通り終始無言で、駅へ向かう私達。 だけど心なしか、深谷くんはいつもより不機嫌そうに見える。 「……あの、待たせてごめんね」 「……いや、別に」 「……………………」 「……………………」 「あの、今度から駅前のカフェで待ち合わせにしよっか」「いや学校でいいよ」 そこは被せぎみにめちゃくちゃ早く返答する深谷くんが不思議だったけれど、とりあえず怒ってないことがわかりホッとした。
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