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待ちに待った放課後。
俺はもはやチャイムがなる前から教室を飛び出し、全力ダッシュで駅へ向かった。
タイミングよく到着した電車に飛び乗り、二駅先の真綾の高校の最寄り駅に到着した。
そしてまた彼女の高校まで猛ダッシュ。
高校に入ってからはバスケは辞めたが、毎日夜間ジョギングをしているおかげで体力は落ちていない。
ちなみに高校で部活動をしていない理由は、思い切り学業に励んでいるせいである。
少しでも良い大学に行き、少しでも安定した職業に就いて真綾にプロポーズする。
それが目下の俺の目標だった。
そんなことを万が一口走ったらドン引きされてフラれるかもしれないので、絶対に心の内に秘めている。
鼻息を荒くしながら校門に到着すると、まだ真綾の姿はなかった。
「あの、すいません。F高の方ですか!?」
「誰か待ってるんですかぁ~?」
見知らぬ女子達に声をかけられ煩わしさをおぼえるが、もしかしたら真綾の友達かもしれないので、無下にすることもできない。
真綾が現れるまで、俺はとにかく耐えた。
待ち合わせを彼女の高校にしていることには理由がある。
それは、彼女の周りにいる男達に、俺という存在を知らしめる為だ。
フリーだと思われて変な男が寄ってこないか、いつも気が気でなかった。
真綾が他の男と話しているところを想像するだけで発狂しそうになる。
「カラオケいかねー!?」
ふと遠くの方を眺めると、嫌な予感が的中していた。
やっぱりここへ来てよかった。
男に話しかけられている彼女に近づくと、そっと腕を掴む。
触れるのには緊張するが、獲られたくないという本能の方が勝った。
「俺が真綾の彼氏です。手を出さないで下さい」という念を必死に送ると、男達はわかってくれたのか、すぐに去っていった。
ホッと胸を撫で下ろす。
校門をくぐり、駅へと向かう途中、俺はどうしたら真綾を独占できるのかを、大真面目に考えていた。
「あの、今度から駅前のカフェで待ち合わせにしよっか」「いや学校でいいよ」
……焦った。それだけは阻止したい。
もっと彼女の高校の皆さんに、俺の存在をちらつかせないといけない。
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