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次の日、案の定郁子は登校早々に深谷くんの話を持ち出した。
「あそこまでの完璧イケメンだとは思わなかった!お見それしたよマーヤ」
「そ、それはどうも…………」
「だけどあんだけ完璧だとさ、いつ他の女にとられてもおかしくないね」
少し意地悪くニヤリと笑う郁子。
私は一番恐れていた台詞を言われて、衝撃のあまり言葉が出なかった。
「ここらで一発、形勢逆転しといた方がいいよ」と、郁子は私を更に煽った。
「…………形勢逆転?」
「今のうちにもっとメロメロにさせて、他の女子なんて見向きもしないようにしとかないと!」
郁子の力説に、私はただ絶句して赤面するしかなかった。
メロメロなんて、あの深谷くんを?
いつもの無愛想な顔を思い浮かべて、妄想前から怖じけづいた。
できる気がしない。
あの顔を緩めることなんて。
「とにかく、今週土曜日、デートに誘うこと!」
「デート!?私が誘うの!?」
「当たり前じゃん。てか、誘ったことないの?」
……そう言えば、会う約束はいつも深谷くんがしてくれてたな。
「どっか行きたいとこない?」って。
でもいつも真顔であまり乗り気じゃなさそうだから、仕方なく付き合ってくれてるのではないかと思っていた今日この頃。
黙りこくる私に、郁子はため息をついた。
「そんなんだからダメなんだよ。……いいから、私に任せなさい!」
急遽郁子様による「形勢逆転デート指南」が始まった。
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