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____「はぁ…………」
帰宅早々、俺は盛大にため息をついた。
その理由は、午後イチで来た真綾からのメールだ。
『用事ができたので今日は一緒に帰れなくなりました。ごめんなさい』
そのメールが来てから、俺の午後からのテンションはがた落ちだった。
帰りに彼女に会えることだけが俺の唯一の原動力だったのに。
こんなことなら朝に彼女の姿を、もっとじっくり目に焼き付けておけばよかったと、隠し撮りしていた写真を眺めながら後悔した。
____♪♪♪
その時、しんとした部屋にメールの受信音が響いた。
これは紛れもなく、真綾だけに設定しているやつ!
俺は横たわっていたベッドから飛び起きた。
『深谷くん、今日はごめんね』
また謝ってくるなんて、なんて優しいんだ真綾は。
でも気にさせてしまったな。
だけど俺のことを今まで気にしてたのかと思うとニヤける。
ふいに画面に映った自身の緩んだ顔に、情けなくなってきた。
『別に大丈夫だよ。気にすんな』
送信。
『ありがとう。それでね、お願いがあるんだけど、』
お願い!?
真綾からのお願い!?
何何何!?
何でも聞く!
何でもする!
全財産使い果たす!
『今週の土曜、空いてる?どうしても見たい映画があって、付き合ってくれませんか?』
その一文を読み終えた瞬間、俺は絶叫しながら思い切りジャンプした。
今ならダンクシュート決められてたと思う。
隣の妹の部屋から、「ドン!」という苦情の一撃が聞こえてきたが、今はそんなことに構っている余裕はない。
なんて返そう!?どんな言い回しで返そう!?
真綾から誘ってくれるのは初めてだから、嬉しさを抑えられない。
『いいよ。なんていう映画?』
にも関わらず、平静を装い送信。
舞い上がってるとバレたら引かれてしまうかもしれないからな。
少し間が開いてから、
『呪いの人形~地獄への誘い~』
と返信が。
……何それ、そんな映画聞いたことねえ。
真綾、そっち系が好きだったのか?
まあ内容は何でもいいんだ。真綾が喜んでくれるなら。
『了解』と返信をした後、俺は速攻で『呪いの人形~地獄への誘い~』のチケットを二枚オンライン購入したのだった。
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