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「深谷くんっ」
勇気を出してそう声をかけると、彼はすぐに顔を上げた。
かなり小さい声量だったのに、深谷くんは耳が良いんだな。
まさかすぐに気づいてくれるとは思わなかったので、焦りながら手を振った。
だけど深谷くんはなんだか様子がおかしい。
口許を手で抑えて、具合が悪そうだ。
ますます慌てて彼に近づく。
「大丈夫?深谷くん……」
もしかして熱中症になってしまったんじゃないだろうか。
思ったよりも朝から陽射しが強いし、随分待ってくれてたとしたら……あれ、もしかして待ち合わせ時間間違えて伝えちゃったとか!?
どうしよう、私のせいで深谷くんが……
「いや、かわ……」
「かわ?」
「……厠に行ってくる」
「……いつの時代の人?」
とか突っ込んでいる場合じゃなくて!
深谷くんがトイレにいっている間に、ドラッグストアへ駆け込み、水と保冷剤と、塩タブレットを購入。
もしそれでも調子が悪そうだったら、残念だけど今日はもう中止にした方がいいかもしれない。
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