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俺がタオルを使っていたことに嬉し泣きをしてくれる真綾がもう純粋すぎて、そんな綺麗な涙を流してくれる彼女に、もう俺もカッコつけている余裕なんてなかった。
体中が好きだと絶叫していて、勝手に動いてしまう。
気づいた時には、もう真綾の手を握っていた。
「うひゃあああ!?」という彼女の叫びに驚いて、あれ?やらかしたかも、と焦ってももう遅かった。
真綾の顔を見る勇気もなくて、振り返らずに彼女の手を引いて歩いた。
真綾の手は、細くて、柔らかくて、最初は少しひやっとしていて、心地好かった。
映画館に着くと、まずは飲み物とポップコーンを購入し、チケット売り場へ。
オンライン購入したチケットを見せようと携帯を開いたその時、真綾がいそいそとカバンから何かを取り出した。
「前売り買っておいたんだ。はい、深谷くんの」
そう微笑んでチケットを差し出す真綾。
「え!?買っといてくれたの!?」
思わず大声を出しておまけにポップコーンを何個か溢してしまった。
慌ててそれを拾う俺達。
彼女にそんなことをさせてしまうなんて、彼氏失格じゃないか。
「悪い、先に言っとかなくて。……俺も買ってたんだ」
そう言ってオンラインチケットを見せると、真綾もまた驚いていた。
「うそ、ごめんね!私が誘ったのに……」
何言ってるのこの子!
もう誘ってくれた時点で元はとれてるから!
いくらでも買うでしょ、一緒に観れるなら!
……おっと、また心の中で取り乱してしまった。
「じゃあ、どうしようか。誰かにあげる?」
どこまでも人が良い真綾は可愛いけれども、そこは譲れなかった。
「いや、今度もう一回観にこような」
「え!?いいの!?」
パアッと明るい表情になる真綾。
「ああ、こういうのって一回観ただけじゃ意味わかんないの多いし」
とか言っちゃってね。よく言うよね、俺も。
「うわぁ、嬉しい!ありがとう!」
満面の笑みで笑う真綾に、幸せの絶頂を与えてもらっているのは俺の方で。
心の中で何度も「俺の方こそ」と呟いた。
しかし真綾は本当にホラーが好きなんだな。
そういうギャップたまんねえな。
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