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しばらく深谷くんの胸に顔を埋めていると、優しく髪を撫でられているのがわかった。
びっくりして、ドキドキしすぎて、もうどうにかなりそうだったけど、今起き上がってしまったらなんだかもったいない気がして、ずるい私は気づかないふりをした。
始めてこんなに近くで深谷くんに触れることができたから。
……それに、深谷くんがこんなことをしてくれるなんて、今まででは考えられなかったし、まさに天変地異。
形勢逆転は一切成功してないけれど、とにかく郁子様ありがとうと心の中で叫んだ。
ちなみに郁子の指南ノートには、わざと手を近づけて触れさせてそのまま指を絡める、急に彼をじっと見つめ顔を近づける、等ハードルが高すぎるものだった。
映画は怖いし絶叫が響き渡っているけれど、いつしか私は、ずっとこの時間が続けばいいと願っていた。
『……呪いは永遠に終わらない。そう、今あなたにも』
そうナレーションが聞こえた途端、突然場内がパッと明るくなる。
はっとして顔を上げると、至近距離で深谷くんと目が合った。
我に返ったように恥ずかしくなって、すぐに彼から離れた。
「ごめんね!!」
「いや、大丈夫」
どこまでも冷静な深谷くん。
なんだか急に、しゅんと心が萎んでしまった。
やっぱりドキドキしてるのは私だけなんだ。
「……真綾、辛くなかった?」
「う、うん。大丈夫だよ。思ったより怖くて……」
「結構刺激的だったな。ストーリーも難解で飽きなかったし」
「うん……」
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