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頂上までの道のりは決して平坦ではなく、ときおり崩れてきた岩が転がっている場所もある。
平地にいるときはすっかり秋だと思っていたけれど、足元を注意しながら歩いていると暑いくらいだった。
サーシャも少し息が切れてきたが、急がなくてはならない。祭りのための食材を早く運んであげないと。もう一度、袋を持ち直そうと足を止めると、ひょい、と袋が奪われた。
「ハビエル!」
久しぶりに会う幼馴染の姿があった。
この前に会った時はほとんど変わらない目線だったはずなのに、今ははるかに高い位置に頭がある。
「サーシャがつかないとピザが焼けないっていうから、迎えに来たよ」
「ありがとう。カトリーナ怒ってた?」
「怒ってた怒ってた。気を紛らわせるために、ダンスから始めることにしたらしいよ」
ハビエルが綺麗な黒い瞳をいたずらげに動かして頂上を見ると、風に乗った音楽がちょうど聞こえてきた。
涼やかな風が髪を揺らし、音楽とともに人々の間をするすると流れていく。
歓声を上げて子供達が頂上に向かって一斉に駆け出していく。
大人たちも息が切れかけていたことを忘れたように、自然と歩く速さが上がる。
「始まっちゃう。早く行かないと」
「ほら、おいで」
ハビエルがサーシャの手をつかんで走り出す。
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