未来への朝

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未来への朝

 静かな朝の光の中で麓の村が浮かび上がってきた。  頑張って起きていた子供達が歓声をあげる。  その声につられて何人かの眠っていた子供達が目をこすりながら体を起こす。大人たちが話すことをやめる。  美しい廃墟がそこに現れた。  朝日を浴びて、誰も住むことができなくなった崩壊した家々が淡い朝もやの中から立ち上がる。  20年前に起こった大きな震災の影響で、サーシャたちはこの村に住み続けることはできなくなった。  村のシンボルであった教会だけはその時も大きな傷跡をおうことはなかった。 この場所に逃げてきた村人たちは崩れていく村を見ながらこの村を捨てることを決めた。 だから、サーシャにはこの村で暮らした記憶はない。  年に1回だけ、地震が起きたその日を「祝祭の日」として村人たちは今でも集まり続けている。幼い頃から年に1回だけ会える友人たちは、会うたびに少しずつ変化を遂げて、いつの間にかサーシャ達よりも小さな子供たちが増え、そして何人かはもう会うことが叶わない。  サーシャは両隣に立つハビエルとカトリーナの手を握った。 2人とも黙って握り返してきた。 帰り道は大学のことや進路のことを3人で話しながら帰るだろう。     
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