未来への朝

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でも、今はまだ失った過去に向かい合う時間だった。 大人たちが過去を語り、この村の記憶をつなげようとしている。 どこまでこのバトンをつなげられるかはまだわからない。 少なくともここで生まれた最後の子供たちであるサーシャたち3人はこの村の記憶とともに未来を歩いていくだろう。  日が完全に登り切った。  朝もやが晴れ、清々しい青空が今日も広がった。 どこまでも遠くを眺めることができそうだった。 「あー、眠い」  大きく伸びをしてカトリーナが歩き出した。皆が帰り支度をし始めている。 「ハビエル、車で来たならどっかで3人でエスプレッソでも飲もうよ」  眠そうな声でカトリーナ提案する。 「いいよ。じゃあ、片付けが済んだら村の入り口で集合しよう」 「片付けかー。ちょっと休んでからにしようよ。あたし、明日からテストなのよね。サーシャ?聞いてる?」 「うん。今いく」  サーシャはもう1度眼下に広がる廃墟となった村を眺めた。  小さな頃の3人がそれぞれの家から飛び出して、笑い合いながら学校に通っている姿が見えた気がした。  そんな記憶はあるはずはないのに誰かの思い出が確実にサーシャの中で生き続けている。  辛かったことや悲しかったこと。  ここを離れることになった時の無力感や絶望。     
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