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間違いない。彼女は俺と弟の事を知っている。今の発言で全て分かった。あとは彼女が自白するのを待つだけだ。
「何が言いたいの? お兄さんの人格が殺したんでしょ? 貴方は殺人犯よ」
「まあまあ、それで田中優とは? どういう関係で? 」
その時、カフェの入り口が開いた音がした。目をやるとそこには大野さんと俺にそっくりな男が並んでいた。
彼女を見るとぐったりと項垂れていた。どうやら諦めたらしい。
「姉さん…… ごめん」
田中優はそう呟いてこちらに歩いた。その後を大野さんが笑みを浮かべて歩く。
やっぱり兄弟だったか。俺は久しぶりに見た田中優の姿を見て弟の事を思い出した。
大野さんは俺の横に、田中優は田中花子の横に座った。
「全て認めるんですね…… 」
二人を見ると田中優が無言でうなづいた。
「優! 」
田中花子は甲高い声を上げた。その声にカフェにいた店員がみんな何事かと振り返る。
「田中優…… お前が一を…… 殺したんだな? 」
俺は田中優を鋭く睨んだ。
「えっ? 」
俺によく似た田中優は困惑の表情を浮かべた。
あぁ、そうか。勘違いしているのか。
「何言ってんだ?一…… 」
田中優はまだ分かっていないのか、俺と田中花子の顔を見渡した。
「二人は勘違いしているんだよ。 俺は荒木二郎。 一の兄だ」
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