事件発生

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指差す方を見ると校門の前に立ち腕組みをしている大野さんの姿があった。 いつもと違う様子なのはこの距離からでも分かった。明らかに目が笑っていない。苛立ちを隠せない様子だ。 下校する生徒もその大野さんを見て避ける様に校門の端を歩いている。 それを見て俺は少し戸惑った。何を言われるのだろうか。 俺の頭の中は真っ白になり、先程までうるさく感じた蝉の鳴き声を掻き消すくらいに自分の心臓の鼓動が大きくなっている様な気がした。 その俺の様子を察してか桜井は俺の一歩後ろを歩く。 ゆっくりとゆっくりと歩き、校門へと着いた。 大野さんと目が合う。その目は冷たく俺への怒りが感じられた。 「あの…… 」 俺は恐る恐る言葉を発した。 大野さんはまだ黙ったまま。まるで俺が白状するのを待っているかの様に思えた。
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