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その時間はまるで永遠とも感じられた。最早、蝉の鳴き声や夏の暑さなど気にもならなくなっていた。
早くその重く閉ざした口を開いてほしい。そして早く俺を楽にしてほしい。
そんな思いだけが募るばかりで、一向に大野さんは口を開かない。
「あの…… 大野さん、俺なにかしましたか? 」
俺はついに大野さんに助けを求めた。どうやっても自分では分からない。何故なら大野さんが怒るべき相手は俺であって俺でないからだ。
もう一つの人格が大野さんを怒らせた原因なのだ。
「お前…… 」
大野さんの声は低く、威圧感を放つ。
ゆっくりと大野さんは俺の前に来る。俺は恐怖と疑問でその場を動かないでいた。
「えっ? 」
俺がそう言ったのと同時に俺の体は少し宙に浮いた。一瞬何が起こったか分からなかったが、胸倉には大野さんの手があった。その手の先に屈強な腕があり、大野さんは俺を睨んでいた。
胸倉を掴まれ俺は大野さんと同じ目線になったのだ。
「荒木…… 何で加奈ちゃんを襲ったんだ? 」
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