結末

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その時、iPhoneがポケットの中で振動した。取り出すと母さんからの電話だった。 「もしもし…… 」 「あぁ、一。元気かい? 久しぶりに声が聞きたくてね」 そう言った母さんだが昨日も電話をしたのを覚えていないのだろうか。そしてまだ母さんは俺の事を一と思っている。 相変わらず母さんとの電話は億劫だ。電話をする度に微かに存在している荒木二郎が消えていく様な気がした。 いや、消えていくのではなく荒木一という人間に変わっていくのかもしれない。 俺は一に近づけているのだろうか。一なら今何を思うだろうか。 そんな事ばかり考えてしまう。もしかしたら本当にいつか二重人格になってしまうのではないかとも思ってしまう。 そして俺はたまに思う。小さい頃は何で兄弟でこんなにも違うのかと思っていた。俺には生まれつきの才能だと思っていた。 しかし違ったのだ。今、俺は努力して一の容姿を得た。努力して勉強し学年でもトップの成績を取れた。 俺はずっと努力してなかったのだ。俺と一は確かに兄弟だったのだ。努力の才能を持った兄弟だったのだ。 「俺は元気だよ。もちろん二郎も…… 」
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